草花
北野つづみ

女の子が手をふる
「てっちゃんの、おかあさーん」
私はあの子の名前 
知らないのに

顔と名前を覚えるのが苦手で
人に会うと、どきまぎしてしまう
間違ったらどうしましょう
それはまるで
あなたのことには
興味、関心がありませんのよ
知らずに告白しているようなもの
そんなときの私は
道端に生えている草花になりたい
草花なら
相手の名前を知らなくても
文句は言われないし
お互いに
いま、ここにある
ということだけ大切にする

春の
草花のような女の子が手をふる
私も静かに微笑んで
さわさわと手をふり返す


二〇〇七年六月十五日


自由詩 草花 Copyright 北野つづみ 2007-09-08 13:36:38
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