帽子屋の夜は雨降り
朽木 裕
硝子玉みたいなブルー ひとしずく ふたしずく
冴え凍るようなアイスブルー 色に反してあたたかい
白磁の肌にそぅっと触れる
(それは白昼夢のように奇妙な儚さを持つ)
光にたなびく髪は金色
風を含んで揺れる 嗚呼 君に触れたい
(黒い帽子のつばに夜の帳が降りてくる)
赤い薔薇より尚 赤い口唇
嘘吐きなんて云わないでくれ
生まれてこのかた本当のコトバなんて知らないんだ
君のことを愛してる?
それは本当のことかな?
緑の芝生にひるがえる 白いフリルのワンピース
細いその肩を掴んでその顔に恐怖を?
(出来やしない それは全て白昼夢だ)
ひとしずく ふたしずく あたたかい涙
帽子屋の夜は今日も雨降り