第四の男
三州生桑

一番目の男が言った。
「彼はいつになったら来るのだらう?」
「いや、彼はもう行ってしまったのさ」
と、二番目の男が言った。三番目の男は黙ってゐた。
「それを残して行ってしまった」
三人の男達は、空席に置かれた本を見た。
「何の本だ?」
「詩集だよ」
「どんな詩集だ?」
「愛について書かれてゐる」
「愛だって!」
と、一番目の男叫んだ。
「愛を言葉にしたのか! 言葉は如何様にも解釈できる。そんなものを読めば、我々は・・・」
「ああ、おしまひさ」
三人の男達は、その本に触れようともしなかった。
「彼は、こんなものを残して一体どこへ何をしに行ってしまったのか」
三番目の男が、初めて口を開いた。彼はさめざめと泣いてゐた。
「彼は、歴史を強姦しに行ってしまった・・・」




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未詩・独白 第四の男 Copyright 三州生桑 2007-09-07 18:56:10
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