ゼリービーンズ
渡 ひろこ
雑踏のあちこちで発生する
ポップな着メロ
それぞれの手のひらの中
ぽろぽろとカラフルな
想いをつかまえる
まるでゼリービーンズのよう
人工着色料かけたみたいな
絵文字やコトバが
小窓を飾る
かぎられたキャパシティ
ほんとうに伝えたいことは
きっと両手に抱えきれないほど
たくさんで
小窓を彩る可愛さだけでは
届かないもどかしさ
確かめたい心のざわめき
瞳の奥の光のゆらぎ
親指でしか語れない
真実は
まやかしの
ゼリービーンズの中に
埋もれる
街路樹の落ち葉にまぎれて
こぼれていく
着信のひとひら
ゼリービーンズの残骸が
湿りけをおびた秋風に
蹴散らされ
街角に消えてゆく