まきび
木屋 亞万
油を失った毛先は
ポンチョの裾の紐
風に僅かに持ち上がり
緑黄緑の筋が覆う
粒粒の乾いたもろこし
錆びかけたギターの弦が
擦られながら音を弾き出す
牛が歩く砂利の坂道
脇に咲く種の向日葵
顔を真っ赤にした夕日
白黒筋の種を一つ拾って
傷だらけのケースに投げた
階段を走るピックは
牛の首を傾げさせ
胸元のベルが静かに鳴る
沈み出すとすぐに落ち込む
暮れた坂道の後ろには
藍色の波が染みてきている
引き止める手の群れは
どの肩にも届かないで
ギターを寝床に納め
みずみずしいもろこし
ひとつ拾って
牛の背を追いかけた
夕日は明日昇るだろう