まきび
木屋 亞万

油を失った毛先は
ポンチョの裾の紐
風に僅かに持ち上がり
緑黄緑の筋が覆う
粒粒の乾いたもろこし
錆びかけたギターの弦が
擦られながら音を弾き出す
牛が歩く砂利の坂道
脇に咲く種の向日葵
顔を真っ赤にした夕日

白黒筋の種を一つ拾って
傷だらけのケースに投げた
階段を走るピックは
牛の首を傾げさせ
胸元のベルが静かに鳴る

沈み出すとすぐに落ち込む
暮れた坂道の後ろには
藍色の波が染みてきている
引き止める手の群れは
どの肩にも届かないで

ギターを寝床に納め
みずみずしいもろこし
ひとつ拾って
牛の背を追いかけた
夕日は明日昇るだろう


自由詩 まきび Copyright 木屋 亞万 2007-09-05 15:03:30
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