顔のない女
なかがわひろか

顔のない女の顔に
雑誌のモデルや
女優の顔を見ながら
僕は毎晩好みの女性の顔を描いた

僕たちは抱き合ったり
キスをしたり
僕のものをくわえさせたり
卑猥なことをして遊んだ

ある日僕は恋をした
僕は一人の女性を愛した
毎日その人の顔を見た
そして顔のない女の顔に彼女の顔を描いて

僕は抱いた
キスをした
性行為をした

時々女を連れて町を歩いた
きれいな顔に描かれた女を
皆が振り返る

ある時女と歩いているときに
彼女にばったり出会った
彼女は自分と同じ顔が歩いていることに
ひどく驚いているようだった

町のみんなも
どちらが偽物だと騒ぎ始めた

僕は彼女を困らせたくなかったので
急いで女を路地に連れ込んで
顔を消し
醜い顔を描いた

女は町の人から
醜い醜いと言われ
石を投げつけられたりした
そのうち女は町から出て行った

僕の愛した人は
以前から付き合っているお金持ちと結婚した

僕はまた醜い顔を描いた女を捜したが
女は町を出るときに
強姦に殺されていた

僕は一人になった

僕は一人になった

(「顔のない女」)


自由詩 顔のない女 Copyright なかがわひろか 2007-09-04 23:43:19
notebook Home