農園
「ま」の字

ひとが生えている

近寄ると体温が匂う
生えたばかりの子株が
かわゆらしく親にしがみついている
泣き顔、笑い顔、憂う顔
みな目を閉じ
しずかに空の下にたち 並ぶ

農夫の姿は見えない

蒸し暑い午後
杭にラジオが鳴っている
「どの地方も視界から消されてゆきます
世界グロウブはいつも活気だらけです」
番組がかわると
あとはまた陽気な音楽

けれど
細流ひとつない
貧しい農園

雨だ

きゅうに人と雑草の区別がつかない
子株をひきちぎり
ディンゴが素早く疎林に消える

目を閉じ
風に揺すぶられ

ひとが生えている



        -グローバルの時代に


自由詩 農園 Copyright 「ま」の字 2007-09-04 20:17:31
notebook Home