私が殺したいのちたち
池中茉莉花
ちっちゃいころ、セキセイインコと暮らしてた
空色のチーちゃん
チーちゃん、チーちゃんおはよ
いろんなことばを 覚える いい子ちゃん
チーちゃんは 粟をつつく
粟が少なくなったら、わたしが入れる
だけど、チーちゃんの粟はなかなか減らなかった
ある日、鳥かごの下にチーちゃんが
ころん、と 死んでいた
父も母も「餓死しちゃった」と言って怒った
「えさの殻だらけだったよ」と
わたしは ぎゃあぎゃあ泣いて騒いだ
また買ってね、チーちゃんまた買ってね
そのうち、またうちにチーちゃんが来た
今度のチーちゃんは、菜の花色のチーちゃん
このチーちゃんも賢くて
チーちゃん、いってらったい
って父に言う
でも、やっぱり
ある日鳥かごの下で死んでいた
「また餓死させたでしょ」
と怒られた
また殻しか入っていなかったんだ
また買ってね。チーちゃん、また買ってね。
まだそう叫ぶわたしがいた
でもね、空色のチーちゃんは
わたしの頭に乗るのが大好き
だけど、菜の花色のチーちゃんは
いつも 肩にとまるんだ
買っても買っても来るのは
違うチーちゃんだったんだ
おなかがすいたと叫ぶ声が
今でもわたしのこころをつつく
ゆるしてくれるな
一生わたしをつついておくれ
チーーちゃん