水色について
Tsu-Yo

*
澄んでいく記憶の端から
水色の汽車が走り出します
ため息や欠伸といった
水によく似たものたちを
揺れる貨車に詰め込んで
透きとおる空の下
滑らかなレールの上
どこまでも
どこまでも
水色の汽車は走っていきます
悲しくないときでも
涙は流れるようです


*
小さな女の子が
水色の目覚まし時計を
右の耳にあてています
長い針と短い針が
ゆっくり
ゆっくりと
廻る場所で
秒針だけが人間みたいです
水色の目覚まし時計からは
小さい生き物の
心臓の音がしました


*
今年も水色の巣箱に
ツバメが帰って来ます
あるいはもう
帰ってきている
かもしれません
ぽかん
と口を開けて
男の子が空を見上げています
その空にも
ぽかん
と大きな穴が開いています
お父さんが
鳥の骨はとても軽いのだ
と教えてくれました
よかった
還るところがあって


*
心とはなにか
そんな有りふれた問いに
あなたは
なんと答えるでしょうか
わたしは
水色のなにかだと答えます
大切ななにかを思い出した
と言うときの
なにか
としか呼ぶことができないもの





自由詩 水色について Copyright Tsu-Yo 2007-09-03 21:46:34
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