九月のみずいろ
銀猫


雨音が
逝く夏を囁くと
水に包まれた九月

通り過ぎた喧騒は
もう暫くやって来ないだろう


踏みしめた熱い砂や
翡翠いろに泡立つ波も
日ごと冷まされて
さみしさを少しずつ思い出す

海より先に九月を手にしたわたしは
恋する体温や
沸々としたなみだを語れず
傘に隠れて
ひとりきり、を弄んでいる

間もなく通り抜けてゆく
五度低い風を
今年はどうしてかわすのか、
そんなことを考える

いつか触れた
ぬるい唇の気配だけが
ここに残っている


きみのかたちは水のいろに溶け
わたし、
泣きかたを忘れてしまった







自由詩 九月のみずいろ Copyright 銀猫 2007-09-03 20:22:38
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