九月のみずいろ
銀猫
雨音が
逝く夏を囁くと
水に包まれた九月
通り過ぎた喧騒は
もう暫くやって来ないだろう
踏みしめた熱い砂や
翡翠いろに泡立つ波も
日ごと冷まされて
さみしさを少しずつ思い出す
海より先に九月を手にしたわたしは
恋する体温や
沸々としたなみだを語れず
傘に隠れて
ひとりきり、を弄んでいる
間もなく通り抜けてゆく
五度低い風を
今年はどうしてかわすのか、
そんなことを考える
いつか触れた
ぬるい唇の気配だけが
ここに残っている
きみのかたちは水のいろに溶け
わたし、
泣きかたを忘れてしまった