にくしみにかえて
木立 悟




水や峡谷の国の演者が
水や峡谷の音を奏でれば
それが水や峡谷なのか
おまえの水や峡谷はないのか


孤独が蠱毒こどくになるまでに
自身の何を殺してきたのか
それともおまえはおまえのために
ただ他人ばかりを屠ってきたのか


響き鳴りつづける器を残して
演者はひとり去ればいいのか
半年ごとに何も変わらぬ言葉を叫び
仲間とつるんでいればいいのか


うつろな喉に赦された
それがおまえの表現なのか
言葉という名の檻のなかで
アカアカアカ carカー
おまえのよだれを見ていればいいのか


蜘蛛は昇り曇は昇る
伝えられるという幻から
何時おまえは自由になるのか
のぼりつづけのぼりつづけのぼりつづけて
それでもおまえは気づかないのか


いつまで顔を見ていればいいのか
いつまで声を聴いていればいいのか
おまえを見たいだけなのに
ほんとうを見たいだけなのに












自由詩 にくしみにかえて Copyright 木立 悟 2007-09-03 01:42:33
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