にくしみにかえて
木立 悟
水や峡谷の国の演者が
水や峡谷の音を奏でれば
それが水や峡谷なのか
おまえの水や峡谷はないのか
孤独が蠱毒になるまでに
自身の何を殺してきたのか
それともおまえはおまえのために
ただ他人ばかりを屠ってきたのか
響き鳴りつづける器を残して
演者はひとり去ればいいのか
半年ごとに何も変わらぬ言葉を叫び
仲間とつるんでいればいいのか
うつろな喉に赦された
それがおまえの表現なのか
言葉という名の檻のなかで
赤と紅と垢とa car
おまえの涎を見ていればいいのか
蜘蛛は昇り曇は昇る
伝えられるという幻から
何時おまえは自由になるのか
降りつづけ下りつづけ堕りつづけて
それでもおまえは気づかないのか
いつまで顔を見ていればいいのか
いつまで声を聴いていればいいのか
おまえを見たいだけなのに
ほんとうを見たいだけなのに