「道化師の祈り」
和 路流(Nago Mitill)

あなたに笑ってほしい。
そのために私は、いつも笑っていようと思います。

どれほどの悲しみが、みじめさが、苦しみが、この胸に渦巻いても、
あなたの前で、私は泣かない。
馬鹿な強がりでもいい、いつでも私は笑顔でいたいのです。

悲しいからと、嘆きにすがりついていても、どうにかなるわけでなく、
私が不幸に顔を染めていれば、あなたの顔も暗く歪み、
悲しみを、ただ増殖させてしまう。 だから、私は笑います。
はじめは嘘の笑いでも、あなたが笑顔でいてくれるなら、
本当の笑顔を取り戻すのも、そう難しいことではないのです。
そして、あなたが悲しみにくれる時、私は笑顔で あなたを受け止める。
あなたの笑顔を、取り戻すために。

どうしても耐え難く つらい時には、私は一人で泣きます。
青い空の下で、深い夜空の底で、
自分のために、私は泣きます。
泣いて泣いて、涙が尽きたら、
あなたのために、私のために、
私は もう一度笑える。 笑顔で時を歩める。

私が泣き笑いをしていることに気付いても、どうか黙っていて。
無理を強いているのではなく、自分のために、
私は笑って生きることを、心に決めたのです。
あなたに笑ってほしい、そのためなら私は、どんなピエロにもなる。

限られた命を、あなたと、少しでも より幸福に生きたいのです。
道化師の祈りが儚いものだったとしても、私は、
あなたのために、私のために、
いつも、笑っていようと思います。



                (2007年・筆)


自由詩 「道化師の祈り」 Copyright 和 路流(Nago Mitill) 2007-09-03 01:38:59
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