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プテラノドン
こうしてようやく眠りにつく頃には文字は無意味。それより、
倒れ伏したベットから耳に入る、とぎれがちな 車の音が好きだ
それは―、日々の重複を語る白紙の上で、最終行でしたためられる
幽霊達も愛用したト音記号。
もしくは、慰められている気がするからか、或は、
慰めを求めていたから、か。車内で犬を飼うトラックの運転手たちは、
深夜、立ち寄ったコンビニか、インターかの、宙ぶらりんな駐車場で、
そこがあたかも品評会の会場であるかのように、ちびた毛で包まった子犬を
悠々と歩かせる。手綱を握っちゃいるがぼくには見えない。しかし、
ぼくにはきっちり見えている。彼の握るハンドル じゃなしに
頭の中で飼っているペット、一匹の魚、を。
そして、彼もまた眠りにつくまでずっと、泳ぎ回る魚の様子を
ぼんやりと見ているのだろうけど、誰かに盗まれやしないか、
内心ヒヤヒヤだろうけど、レッカー車に引きずられていく車を眺めながら
先人たちは言った。―大切なのは、キャッチ&リリース、と。
「代償さえ払えばすべて済む話じゃないか」
ぼくは運転手にたずねた。「NO!」と犬が吠え、はっと我に返る。
いつのまにか飛び出したぼくの魚が、びちゃびちゃに濡れた枕の上で、
跳ねている。そして、ゴロゴロと、喉を鳴らしながらすり寄ってくる
月を
猫が見上げていた。
誰が飼っているか見当もつかないが、
いまのところは
一安心。