最後の船旅行
なかがわひろか
大雨が降って
やっと箱船日和がやってきた
世界が終わるまでに
なんとか間に合いそうだ
どれだけの長い日照りが続いたろう
以前に用意していた女たちは
皆ひからびてしまった
新しい女たちを探しに行かなければならない
雨足はどんどん強くなる
洪水が家々を押し流し
家の中にいた者は流される
その中から女だけを選んで船に乗せる
そろそろ船がいっぱいになる
人々は押し流されていくが
もう船には乗せることができない
好みでない女を何人か洪水の中に落とした
少し船に余裕ができた
私はそこに寝転がり
女たちの愛撫に目を閉じる
世界がまた始まったら起こしてくれ
そう言って
私は眠りに落ちる
(「最後の船旅行」)