ラッパ小僧
柳瀬

僕はラッパを吹く
夜になると、もう銀色にはげた重いラッパを机の下から持ちだして
家の屋根の上で夜空に向かって元気よく吹く

パーパラパーぱっぱーパパー

たまに、近所のおじさんにすごく怒られる
うるせえよこのきちがい!
と、窓を開けて怒鳴られる
でも僕は気にせずに
屋根の上に直立して
ラッパを吹き続ける

パーパラパーぱっぱーパパー

僕の奏でるラッパは
ゲロを吐くときみたいな音色をしている
涙を流してよだれも垂らして
ゲロを吐くときみたいな音色をしている

パーパラパーぱっぱーパパー

たまに、本当に星が一つも出ていない夜がある
そんな日は少し張り切ってしまう
僕の奏でるこのラッパの汚い音色でも
聞いてくれる優しい星達を夜空に集めたいと
そう思って、少し頑張って吹く

パーパラパーぱっぱーパパー

でもね、だめだね
僕がラッパを吹いても
集まって来るのは僕に文句や因縁をつける人間達ばかりで
ままやおばあちゃんみたいな星が集まってくる気配なんて
まったくない

パーパラパーぱっぱーパパー

それはそうと
僕が傷つけたあの子やあの子
元気にしてるかな
あの子は今でもご飯が食べられないのかな
あの子は今でも誰かのためだけに一生懸命なのかな

パーパラパーぱっぱーパパー
パーパラパーぱっぱーパパーパーパラパーぱっぱーパパー

僕は人間がとても好きだよ
それでもたまに
このラッパを全然知らない人の頭に振り下ろしてみたくなる

パーパラパーぱっぱーパパー


自由詩 ラッパ小僧 Copyright 柳瀬 2007-08-27 22:53:04
notebook Home