明楽

ますます狭い部屋に
閉じ篭もってゆくわたしを
あなたは窓の外からチラリと覗いて
さも知った風に
典型的な自閉症だね
なんて言うから
わたし おかしくて
おかしくて
うつむいて肩を震わせながら
必死に笑いを押し殺していた

それなのにあなたは
泣くなよ 頑張れよ
そしたらすぐに治るよ
なんて 言うから
ますますおかしくて
おかしくて おかしくて
笑いが堪え切れないほどになって
耳の奥できーんて音が突き抜けてって
とうとう わたし
わたし
手榴弾が爆発したみたいに
身体全体 弾けて笑い出しちゃった

その拍子に鳩尾の辺りから
黒い何かが飛び出して
あなたの生温かい笑顔を
見ているようで見ていない目を
窓越しにべったりと塗りつぶした
そしたら急に
一皮むけたみたいにすっきりして
わたしはお腹の底から声を張り上げた

何も知らないくせに!
何も知ろうとしない!

それだけ言うと また
どうしようもない笑いがこみ上げてきて
わたしは笑い続けた



部屋の中が見えなくなって
あなたは外でオロオロしているけれど
ドアを開けて入ってきてはくれない
入ってきてはくれないんだね
笑いすぎた目からポロリと涙が落ちた






※作者注
自閉症は先天性の障害で、生まれ育った環境によって生じる障害ではありませんし、こころの病気でもありません。

【日本自閉症協会】
http://www.autism.or.jp/


自由詩Copyright 明楽 2007-08-27 22:35:05
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