妹
美砂
君なら
しっているよね
赤い鳥居をくぐるごとに
空気
ひんやりしてゆくこと
しっているよね
お城の石垣にのぼる理由
そこから落ちるときの
一瞬の長さ
しっているよね
わたしがズルしたから
わたしの手の平を
鉛筆で思い切り突き刺した
君
君はもう
わたしのそばにいるわけじゃない
大人になって家庭をもって
働いて、土日もバイトいれて
慌ただしい都会のさなかで
通勤用の自転車盗まれたりして
君、君に刺された
芯のあとがまだ皮膚に
透けてみえて
わたしは誇りのように
だれにでも
みせびらかしてしまうの
まっすぐな君が
この傷跡に
ひそんでいるようで
ながめては
愛でる