やさしみ
AB(なかほど)



そんな事も知らない間に
大人になったので
泣き屋に
ひとつのパンで
泣いてもらった

それでも
わからない顔をしている僕に
泣き屋は
パンを返してくれた

彼女は家に帰ったら
本当に泣くのかもしれない

そう思うと

雨が降ってきて
コオロギの声がして
月の影がゆるんで
流れ星が止まった


そのパンは固くなってしまって
食べるには
自分の涙が必要だった



さよなら
さよなら
泣き屋はもういないよ

エジプトの星が歌っている




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自由詩 やさしみ Copyright AB(なかほど) 2007-08-27 18:42:47
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