追憶
ゆるこ
透明な
沢山の唾液を
己の弦に着けて
震えた空を
優しく眺める
ぬらぬらと
赤光は髪を染め
純粋な声が
遠くに吸い込まれた
静かに行われる
養分の脈動は
椅子を愛した男の心音と
まるで同じで
不埒な程のネオンが
暖かな涙に変わるのは
一種の幸せな魔法だと
薄い唇は語る
沢山のコードが
ぐらりごりごりと
体の中でのたうちまわる
その度に不安定な足の裏は嘆き
枯れ果てた意義は無くなり
ただの人形へと変貌する
紙風船が
路地裏の風車を蹴り飛ばし
新しい、と呟けば
それは明日の始まりだと
信じて疑わなかった、ころ