誰かの手
服部 剛

少し前まで 
座っていた席の下に 
置き忘れた
飲みかけのペットボトルを 
扉を閉めた電車は 
線路のかなたへ運んでいった 

きっと 
作業着姿の誰かが 
忘れたゴミを 
無表情に屈んで 
拾ってくれるだろう 

この足で上る 
駅の階段と大きな駅ビル  

右手に握ったペン 
左手に持ったノート 

今日に自分を彩る 
Tシャツとズボン 

見知らぬ誰かの
働く手につくられた 
すべてのものにつつまれて 
目に映る世界の只中に 
今、ぼくは立っている 





自由詩 誰かの手 Copyright 服部 剛 2007-08-26 22:42:23
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