逃夏
明楽

もうすぐ 八月の空が
落ちてゆきそうなので
また わたしたちは言葉を選び
逃げる準備をしなくてはなりません

「またね」を 残してゆくと
来年は とても からっとした
笑顔が ぱぁっ と
弾ける八月になります

「さようなら」を 残してゆくと
来年は 少し しっとりとした
心が きゅぅっ と
前屈みする八月になります

何も 残さずにゆくと
来年は ただ すっきりとした
身体が すぅっ と
透きとおる八月になります

今年のわたしたち次第で
来年の八月は どうにでもなるのです
何も残さず 逃げるのは
案外 難しいものですが

それでは 準備が出来たら
さぁ 逃げましょう
八月の空が 落ちる前
空がもっと 高いところに





2005.8


自由詩 逃夏 Copyright 明楽 2007-08-25 17:39:47
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