逃夏
明楽
もうすぐ 八月の空が
落ちてゆきそうなので
また わたしたちは言葉を選び
逃げる準備をしなくてはなりません
「またね」を 残してゆくと
来年は とても からっとした
笑顔が ぱぁっ と
弾ける八月になります
「さようなら」を 残してゆくと
来年は 少し しっとりとした
心が きゅぅっ と
前屈みする八月になります
何も 残さずにゆくと
来年は ただ すっきりとした
身体が すぅっ と
透きとおる八月になります
今年のわたしたち次第で
来年の八月は どうにでもなるのです
何も残さず 逃げるのは
案外 難しいものですが
それでは 準備が出来たら
さぁ 逃げましょう
八月の空が 落ちる前
空がもっと 高いところに
2005.8