光の回折
凛々椿

庭に舞うチンダルブルーの鱗粉が日に灼かれて
ちりちり して
なんだか今日は風がうるさいなあ

小さい頃の家の庭にも
同じのが飛んでいて
つかまえようとしてもひらひら
ひらひらと

あの頃は
特別な言葉の羅列が目の前に悲鳴のようにつんざいては
立ち消えて
そしていつも空が重たくてしかたがなかった
ぬいぐるみの転がる路上にネオンの光差していて
どうしようもなくて走り出して
歩道橋のやさしさと雑音のやさしさに
煙と一緒に溶けていたっけ

恥ずかしい思い出ばかりだよ
マンホールに頭ぶつけてたんこぶできたり
ランドセルを右肩だけでしょってみたり
道に落ちてたドッグフードを食べてみたりね
あれはあんまりおいしくなかったな

年月は歌うように
眼の右上と左上にちかちかと点滅して
空しさは苦笑いに変わり
今は穏やかに

そしていつかゆっくりと忘れていって
それでも悲しくはないのだろう
重かったはずの空を見たりマンホールを見たり歩道橋を見たりして
少しだけ思い出したりして
笑ったり嘆いたりもして

そして蝶はいつまでも
飽きもせずに庭を旋回して いて






自由詩 光の回折 Copyright 凛々椿 2007-08-23 09:14:51
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