約束
海月

窓を開けると
渇いた夏の風が髪を浚い
安らぎの匂いがした

教室の窓側の席
君はいつも遠くの世界を見ていた
何も変わらない風景
一年を通して見れば違って見える
君はそう呟き視線をはずした

終わりを告げる鐘が鳴る

さよなら
また、あした

約束の重さの意味も分からずに交わした
私からの言葉を君は頷いただけ
その事がどんな言葉よりも安心した

君との帰り道はいつも話すこともなく
沈黙だけが二人を包んでいた
周りは駄目な恋人と冷やかされたけど
君はそんな事も気にせず
私も気にもとめずにいた

夕焼けに染まる空を眺めて
君はそっと私の手を握った
その横顔は赤く染まっていた
どうしたの?って聞いても
夕焼けのせいだよって言われた
自然と会話が続いていた

どれくらい関係はいられるのだろう?
いつしかその事を考える様になった
その度に今の感情に溺れ考えない様にした

時は優しく日々を重ねて
終わりが見えるようになって
私は怯えていた

時が戻れば良いのにって
一日が終わる時に祈っても
次の日が来た

私らしい別れの言葉を捜した
だけど、何も出てこないで
君への愛しさだけが重なる

本当に最後の鐘が鳴った

さよなら
また、こんど

今度はないと知りつつも言葉がなかった
相変わらずに頷く君

沈黙の帰り道
少し先を歩く君
最後の分かれ道
本当の最後が来た

さよなら
また、こんど

さよなら
また、こんど

君からの最後の言葉が嬉しかった
いつもならば頷くだけの君の言葉

×××約束


自由詩 約束 Copyright 海月 2007-08-23 00:12:52
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