つばさ みどり
木立 悟
微笑みかけた頬
何もない明るさ
目を閉じたまま
早く目覚めすぎた朝
何かが既に去った跡
曇と曇のはざまの手
子の膝もとに蛇はいて
緑に金に
息をしている
焦げた声が木をめぐり
屋根に映り灰になり
同じ色の午後を追う
冠と髪にひたされて
耳は少しだけ見えている
子は 色を聴いている
陰に生まれる光の泡
雨と枝のなかをすぎ
音と猫の眠りをすぎる
息を残し 蛇は飛び去る
子はゆうるりと冠にのせる
冠は 水に変わりしたたりおちる
空の途中で消える雨
緑へ金へ
降りつづく虹
片目の奥にひらく花
ひとつの文字にひらく森
子の手のひらの器を揺らす