夜中の十二時
乱太郎

一行が零れてきそうな
静けさに
眠りなさい と
夜は耳元でささやく

白い羽を揺らす誘惑に
応えようとする肉体
沼地の底に落とされるかもしれない
そんな不安は
片顔隠した月が
煙草の火で揉み消してくれる
信じようとする片方の右足

左目は
星の瞬きに我を忘れて
瞼を閉じようともしない

白鳥が舞い降りた湖では
白い鍵盤のレの音だけが
蝶に変身して
辺りをふらふらと

二行目が
落ちてきそうになると
どこだか分らない
夜の振り子に揺られだす
銀河鉄道に乗せられたみたいに

右目と左足も
切符を片手に寝台に横たわる

やがて
夢の世界で起き上がり
気泡になって
浮遊する言葉に弄ばれる

朝が連れ戻しに訪れるまで


自由詩 夜中の十二時 Copyright 乱太郎 2007-08-22 17:19:34
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