再開発の片隅で
楠木理沙

壊される街 創られる街
ノスタルジーを感じるこの街は
一体どんなノスタルジーを壊して出来たのだろう
ノスタルジーを壊して出来るこれからの町は
一体どんなノスタルジーを創るのだろう
街が人を揺り動かして
人が街を揺り動かす
繰り返される色違いのパターン 

木造建築に覆いかぶさろうとする鉄筋コンクリートの下で
畳の匂いがするベッドに潜り込もう
そこで僕らは夢を見る
駆け上がる石段の脇に浮き上がる動く歩道
賽銭箱に隠れたATM
初恋の君が手に握っている風車を揺らすビル風の匂い

粗目のように光る記憶と淡く激しく移ろう街並みの中で 大きく息を吸い込む
過去・現在・未来 三色の空気を吸い込んだら 思い切り吐き出せばいい
二酸化炭素交じりの鮮やかな溜め息がセカイに溢れ出す

慣れない原色に目をチカチカさせながら 涙目になって歩き出す
訳も分からず捨て去ったものを振り返り続けるけれど
それを弱さと呼ぶことはない
これから広がる風景に対する無機質なまなざしを
強さと呼ばないことと同じ理由で



自由詩 再開発の片隅で Copyright 楠木理沙 2007-08-21 23:05:29
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