クジラの小便
Tsu-Yo
クジラは人間の
小便が好きだった
防波堤の影に隠れて
小便をする人間を見つけては
そおっと近づいて
その慎ましやかな水の流れを
うっとりと眺めた
もしあそこに
小さな虹が架かったら…
そんな想像をすると
もうひっくり返ってしまうぐらいに
胸がドキンドキンと高鳴るのだ
クジラは人間のように
美しくなりたいと思った
だから少しずつ潮を吹く練習を
一生懸命にした
けれどそれは
いつも威勢良く空へ向かって
一直線に上がってしまうのだ
あぁ、なんて下品な
おこないなのだろう
クジラが悲しそうな顔をして
溜め息をついているころ
沖では子供たちが
大きな歓声を上げるのだった