ノート(夜と草色)
木立 悟
外へ飛びたち
かけらを食べた
光になれない
鳥は何になる
次の虫がもう
鳴きはじめた
小さな背の原
熱ではないもの
葉をひるがえす
さよならを解く
蓋が上から来る
ところどころ透きとおる
月の地図を持つ
過去が積もる冬
路地と坂の絵
誰もいない路
燃えて燃えて燃えて
草色と縦の喉
手のひら双つ分の呼吸
つなぐ術のない野生馬
爪と月のかたちの傷と
同じ数だけ地を打つ雷光
頬のかたち 目のかたち
つながりとふるえに気づきながら
やわらかさを守るために黙りこむ
あえてまわる あえてめぐる
数字の音を読みつづける
色と水のはばたきの記憶
犬と兎 狐と猫
喉なぞるかたち 灯火と息
羽を持たないものたちの羽
夜よ 夜よ
五番めの火よ
街を見捨てぬ汚れた背よ
おまえがおまえを燃やすとき
門番もまた燃え上がり
月に新たな道を落とす
水を踏み 水を越え
離れられない互いを知る
共に唱うたましいを知る
短命と長命の言の葉が
見えない皿に並べられ
にぎやかな指に娶られてゆく
原の子を守る獣の耳に
海の獣の声がとどろく
夜は夜の手をつなぐ
草色の指を確かめる
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