明日の行方
恋月 ぴの

馬でも風邪を引くらしい
何だかひと安心したりして

年末だったかな彼氏に連れていかれた
新宿南口の場外馬券売り場で見かけたのは
レースに夢中な父親とはぐれた幼い兄弟
通路に散乱する外れ馬券の一枚一枚を拾い集めては
ぶつぶつ呪文を唱え丸くなれるだけ丸くなる

ふたりの目線の高さでばさばさ揺れる
競馬新聞より浮かび上がった花まるとか曼荼羅とか

てことは鹿も風邪引くのかな

くそ暑い夏は嫌で嫌でしかたないけれど
そんな夏でも過ぎ行く気配には何故か物悲しく

あの子たちの拾い集めた外れ馬券
何かの弾みで当たり馬券に変わったとして
それで何がどう変るっていうのだろうか

このままじゃ寝冷えしちゃいそう

寝入った彼氏からタオルケット奪い返したら
あのふたりと同じように丸くなれるだけ丸くなり
明日は今日の続きでありますようにと
ぶつぶつ呪文を唱え眠りに落ちる


自由詩 明日の行方 Copyright 恋月 ぴの 2007-08-19 18:55:32
notebook Home