明日の行方
恋月 ぴの
馬でも風邪を引くらしい
何だかひと安心したりして
年末だったかな彼氏に連れていかれた
新宿南口の場外馬券売り場で見かけたのは
レースに夢中な父親とはぐれた幼い兄弟
通路に散乱する外れ馬券の一枚一枚を拾い集めては
ぶつぶつ呪文を唱え丸くなれるだけ丸くなる
ふたりの目線の高さでばさばさ揺れる
競馬新聞より浮かび上がった花まるとか曼荼羅とか
てことは鹿も風邪引くのかな
くそ暑い夏は嫌で嫌でしかたないけれど
そんな夏でも過ぎ行く気配には何故か物悲しく
あの子たちの拾い集めた外れ馬券
何かの弾みで当たり馬券に変わったとして
それで何がどう変るっていうのだろうか
このままじゃ寝冷えしちゃいそう
寝入った彼氏からタオルケット奪い返したら
あのふたりと同じように丸くなれるだけ丸くなり
明日は今日の続きでありますようにと
ぶつぶつ呪文を唱え眠りに落ちる