フィルター
風音
風吹く道を歩いていると
草原の中に
なにか光るものが
僕の目にうつった。
それは薄い薄いガラスのような
氷のように冷たいフィルター。
僕はそれを目に当ててみた。
世界は悲しみ色に変わった。
美しさも
寂しさも
悲しみの色に染まって。
何もかもが
かなしくかなしく。
だれがこんなにも
悲しみのいろを落としていったのだろう。
僕はフィルターを外そうとしたけど
どうしても外れなくなってしまった。
きっと僕のための
悲しみ色フィルター。
これから先僕の目には
世界は悲しくうつって
いつか魔法がとけるまで
このままでいる。
だれもが悲しみいろの
フィルターをしていることくらい
僕だって知っている。