ノート(夜と水)
木立 悟
水に挿されたくちばしが
海を海へ引き寄せている
己れの舞を舞うものにあふれる
帳も 色も
響きを奪われ
なお鳴り響く
ひきちぎられた
半分に満たない
紙と鉛をひたす文字
歓声は消え
痛みは残り
ひとりを歩む
胸と胸の骨のはざまに
叫びの落ちる洞があり
時間を知らずにかがやいている
曇になる曇
閉ざされる門
蒼と白と 声やまぬ夜
罪のむこうにある罪が
静かに花を育てている
花は 人のように口をつぐむ
終わりの終わりまで波は到く
しずくに触れるものが
はじまりを聴く
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