甲とうた
木立 悟
声の名残りが
短く重なり
雨と雨の手
屋根に眠る手
甲をめぐる
ひとつの羽
道はかわき
風は糸に寄りかかる
見えない刃と刃がすれちがい
音だけが回り 残される
夜が光に唱ううた
雨のなかをすぎてゆくうた
からまり消える 水の糸
息と息と息の端々
踏み出した足は一を拒み
踊り場をゆうるりと曲がりゆく
窓の内側を欲しがる手
屋根を開け 静かに降りてくる
甲には
羽の名残りの骨がまたたく
つながるようでつながらぬ道
水を光に分ける道
ひとつに重なる甲と甲
空と海の隔たりに咲く
自由詩
甲とうた
Copyright
木立 悟
2007-08-18 20:16:46