モノクロームな セリスモス
モーヌ。




パンの いる 午後

滑るように わたるように 遠投...

その 距離は 長く 零の領域で 黙秘 して いた

コバルトの 蜃気楼の むこう から

泣きながら 出て いった ひとが 帰って くる

背なか いっぱい 束ねた 収穫を 持って いて

冬と ちがって 夏が もの恋しく させるのは

あかるくて

花々が 継がれて ゆくのが わかった と おもう

いっせいに あふれさせて 消えて ゆくように

いそいで きのうの 花は 旅立って しまう けれど

いまは 月見草の 帯が 立体交差 する

野の道を 散らばって

いくつかの でこぼこの 父の 靴たちが

つけて いった おおきな あしあとたちを

かさねて あるいて

よろこびの 唄を 唄いながら きて いる





空と 土地が かさなる ところ

それは ぼくの 住んでいる ところ にも ある

解放的に なった 少女の 入道雲の

ほほの 白鍵に 映る リベルテの 音が 鳴る

恋の ような おもいが 通過して ゆく

こころは ひとつの 通過駅に あった

きみの 眼で 世界を 見たい と おもい

きみの 手で 世界に ふれたい と おもう

まったく 刷新 された あたらしい世界の ように

ひとつの 城門へと はいって ゆく





曲の あいまの 休符を おそれない

夏にしかない 青空の 暈から はずれた くらがりから

みんな シャボン玉を 吹く

それらは バトン わたされてゆく バトン

ぼくは ピアニストを 撃った

かもめの子の 椅子に すわって

空の ピアノを 鳴らせ

ぼくを けん引 しているのは 星の子の リベルテ

重くなった からだが 軽く なる

ごと ごと と 地球の 音だけが するまで

押し 黙って いると

パンの 魔法に かかった ように

小鳥 風 ひかりと陰 みなせの音

せみ とんぼ...

つながることが 生だと いう

ひとつの 糸を 縫いこむ ように

みな 音を はずさない

はずしているのは ぼく だった

いつも そらして 音を 立てて いたが

ああ もう 黙ろう...

すると ひとつの 音が そえられて

長き 調べの なかで 鳴り 昇って ゆく

ひびも また 唄うので あった

運動の 告げて くる 連続性の

描く 線が うつくしく

ただ 胸に ばかり 告げて いった












自由詩 モノクロームな セリスモス Copyright モーヌ。 2007-08-18 07:08:44
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