氷水
ヨルノテガム





寒い夏の切符の手の中に
こけし、氷細工で棍棒みたく

相手は雪おんな

まだ抱き合わずに耳首へと冷たい吐息を吹きかけあう
うしろからうなじを舐めると氷柱の味がする
練乳を求める色情は冷蔵庫のような腰まわりを抱き、
喫茶店の冷えたおしぼりが二本並んだ冷足へと顔をうずめる
左のアキレス腱に口唇を添わすと思いもよらず口一杯に
果汁が溢れ返ってくるくる、おんなの髪は濡れて

プールへの飛び込み程強く 男は水波を打ち浴びせた
雪おんなの体を

素潜りで

息を止めて

吐いて

海女さんより乱獲、
スキューバーダイブより命懸けの
合体を計った


溶けた水の上で おんなは
細雪が降ってきたわね と声を漏らした
それを見上げた男の首筋を
女は氷爪のある人差し指で ズンと突いてくさる

男はすでにいつの頃からか雪おとこだったから、
ああ、一層 気持ち良いネ と
おんなに笑いかけた


雪は大きな塊で
二人の肩に
落ちてきた



















自由詩 氷水 Copyright ヨルノテガム 2007-08-18 04:33:37
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