光速の美夏
小川 葉

即席のバーベキューセットで
思い出を焼いた
崖から海へ降りる際に
つかんだ植物さえ
根こそぎ収穫した
無人島生活は今日で
一ヶ月目になる
暦の上ではすでに
夏は終わっていたはずなのに
すべてはそこから
はじめなければならなかった
太陽の光も
減速することはなかった
お母さんが
美しい人魚になった瞬間も
ぼくとお父さんは
忘れなかった


自由詩 光速の美夏 Copyright 小川 葉 2007-08-18 03:11:13
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