向日葵の声援
服部 剛

早朝の蝉達は
すでに目覚め 
茂る緑の木々に隠れ 
全身を震わせ、鳴いていた。  

無人の母校の校庭で 
跪き、両手を合わせ 
朝焼けの空を仰げば 
悔し涙はしぼり落ちる 

( その時 
( 遠い山奥から 
( 新たな一日の
( 幕開けを告げる鐘の音が 
( 幾度も鳴り響いた 

ふぬけた役を演じた 
昨日の自分を思い出し 
拳を握り、立ち上がる。 

( 校門を出て
( 細道を歩く 

( フェンス越しの観客席に並ぶ 
( 老若男女の向日葵ひまわり達は身を揺すり 
( 行方知らずの今日へ向かって 
( 静かな炎を胸に秘めて歩くぼくに 
( 無数に開いた草の両手を振っていた 

いつもの駅へと続く
階段を上り 
遠い緑の茂みから聞こえる 
蝉達の合唱を耳に 
券売機の口から差し出される 
「 今日という日の乗車券 」 
を手に取り 
ポケットにしまった 





自由詩 向日葵の声援 Copyright 服部 剛 2007-08-17 23:44:54
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