つくつくぼうし
yo-yo
夏は
山がすこし高くなる
祖父は麦藁帽子をとって頭をかいた
わしには何もないきに
あん山ば
おまえにやっとよ
そんな話を彼女にしたら
彼女の耳の中には海があると言った
その夏
ぼく達はいっぱい泳いだけれど
それは果汁のような海だった
夜は砂の上に寝て
耳と耳をくっつけて遠い海鳴りを聞いた
いま山の上には祖父の墓がある
あれから
夏が来るたびに
ぼくは片足でけんけんをして
耳の水をそっと出す
自由詩
つくつくぼうし
Copyright
yo-yo
2007-08-17 21:11:30
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