君が名
わら
10万人の名前を書き並べてみる
書き並べてみる
書き並べてみる
ただ、ただ、
帯のように
書き並べてみる
それぞれの名前
いろいろな名前
きれいな名前
かわいらしい名前
勇ましい名前
あのヒトに似た名前
ほんの、ひとつづりの名前たち
ほんの、ひと筆
なにも飾りつけない
ただ、ただ、ただ、
無言のまま
10万人
100人目で、うでは疲れ
1000人目で、痙攣は起こり
三日三晩、一睡もせず
意識は朦朧としてくるのだが
その手は止めず
書きつづけども
2万人にも及ばなかった
ああ、
とめどなき とめどなき
黒く連なりし名は
山よりも長く
ほんの、100人を手にとっては
その色濃きに
ことばをなくす
わたしは、その存在に
呆然と立ちつくす
わたしは、その尊厳に
真には気づきもしていなかった
名を書きつらねる
名を書きつらねる
張り裂けんばかりの無情の念を
そのかけがえのない生涯を
せめて、
ひと筆とまでに省き
すべて、あがなおうとせども
ああ、
それでも
遠く、およばぬ
せめて、
それだけでさえも
あがないきれぬ
このうでは折れてしもうた
わたしは、やっと
その悲惨を目のあたりにした
10万が焼けたのは
ほんの、一瞬だったと言うではないか
10万
100万
1000万
ほんの、ひとつの戦がためだったと言うではないか