あなたの目が 覚めたら ⅱ
もも うさぎ
ここはプラードという
カタローニャの街で
寂れた旧市街には
悲しげなリュートの音が聞こえて
この小さな街に
カザルスは亡命してきたのだという
晩年 ホワイトハウスでカザルスが演奏したときの
言葉と'鳥の歌'を
あたまの中で反芻してみる
その教会への坂道を
木製のチェロケースを引きながら
カザルスは毎日登ったのだと いう
あたしは世界に取り込まれる
銀色の砂漠のような
粒が光ったと思い手に取ると
瞬時にそれは光りを失い
また違う粒が光る
そして いざなわれる
その月が
誓いを帯びた十字架のように
ましろな一片の
印象派の偶像であることを
あたしは分かる
現実と映像を行き来する