飛行船に乗って
長谷川智子
だれかの温かい手につられて
また踏んだあの甲板
そう 見なれた茶色くまぶしいところ
窓の外はお祭りさわぎ
色とりどりのじゅうたん 花畑のような
いつもぱっとしないこの町もこの日だけは色めき立つ
ああこんなことなら先にキャラメルポップコーン買えばよかった
あとのまつり
温かい手のぬしの指先が窓の一点に注がれた
ごった返しの空間少し離れた一角に紙芝居小屋
ここはうってかわって空いていた
ここにぽつりぽつりと座っている子供たち
「さあおはなしのはじまりはじまり〜♪」
小さな箱の幕が開いて拍手の波
のぞいている双眼鏡のアングルをしぼった
そこには・・・
鉄人28号
ワンダースリー
ひみつのアッ子ちゃん
に始まって
ドラえもん
ガンダム
クレヨンしんちゃん
そして・・・
昔住んでたぼくの家並み
町並みよりも小さくて 風がぬるくて心地いい
あ、あの子もこの子もどのこもみんな なつかしい
あ、あんなこともあったな
あ、こんなこともあったな
まぶた閉じれば いろいろおもいだす
だれかの温かい手につられて
また踏んだあの甲板
そう 見なれた茶色くまぶしいところ