カリスマ的音楽家の道しるべ
狩心

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ぜんぶやっちまって
しんじまったあいつは
ショーマンだった
みんなをコントロールして
言っちまえばさ
洗脳さ
みんなは彼を神と呼んだけどね
くれいじーですばらしいと

彼は幻覚を好んだが
彼自身が幻覚だった
というかお前ら全てが幻覚だ
騒いだ後に必ず静寂は来るのさ

退屈な俺は早送りされた
それでもそこで挫折からの復活劇を
無音の字幕と共に見せてやったが
どうせそれは監督の編集の下で作られた虚像だよ

真実はないとしても事実はあるとしよう
だからお前は早送りを再生に戻す
スローにする勇気はないがな
とりあえずこの音楽だけは聞いとけ
耳に残るから

ヘッドホンを耳から離して
くっ付けて、離して、くっ付けて、離して、くっ付けて
そんな事を繰り返して自分の聴覚が可笑しくない事を確かめる

俺は人生の中で数々のテストを繰り返した
テストじゃなくて本番の本物の
いつくるの
もう早送りでいいよ
どうせ大した事は言えねぇんだから
おれの字幕を読む必要はない

俺は白人なのになんでか黒人の息子ができた
尻軽の恋人がパンダだったせいだ
パンダと何度も話しすぎた
そもそもこのパンダ幻覚だろ?

誰かが俺におまえは迷走してると言った
その台詞が苛つくので早送りを四倍にした
映像もついて来やがる
音楽家がなんで映画監督にならなきゃいけねぇんだ
めんどくせぇよ

みんなここは暑すぎる
ビジネスにはならねぇよと言った
だからいつの間にか
パンダが真っ黒なベアーになったわけだが
おまえそもそも幻覚だろ?

花火がやけに綺麗で
ダイナマイトを頭に巻きつけて死のうとしたんだが
水中に飛び込むとダイナマイトも役立たずだった
ベアーと格闘して愛してると呟いた後に散弾銃で射殺してやった

俺は完璧な手話と読唇術を覚えて世界が変わった
英語は英語じゃないと分かったし
日本語の「あ」の中に無限の意味が込められている事も分かった
そして静寂の中に音楽がある事も分かった
今更になって
本当のセックスの意味を知ったし
この止まらない振動の意味も知った

車を走らせる事で
前に進んでいる気になっていたが
前になんて全然進んでねぇんだよ
並木道の木と木の間から零れる木漏れ日を浴びていただけなんだ
時々目を細め、眩しいふりをした

おお、俺はまたいつの間にか密室で
大勢の渦の中で揉みくちゃにされながら
自分が中心だと思いながら手を上げて踊ってる
みんなも手を上げて意味も分からず踊ってる
サイコーとか言いながら何度も同じことを繰り返す

十年前に見た風景が今はもう違う風景に見える
これは冷静とか理性とかじゃなくて経験なんだ
むかしの仲間がおいまた行こうぜって言っても
おれはもう行かねぇよって言う

みんなが透明の俺にバイバイって言う
おれは新しい妻と白人の息子を抱えて故郷に帰っていく
今度ばかしは俺がみんなのために音楽をガンガンやってやるんじゃなくて
みんなが俺のために音楽を流してくれたね
おれにはもう聴覚というものがなかったが
みんなのその音楽はおれの背中を押したよ
だから俺はもう戻れないと決心したんだ

ここからは誰も知らない俺だけのストーリーだ
既にあるものから選んでそれをミックスして
同じリズムを何度も繰り返すだけのDJはもう飽きた
さよなら音楽


自由詩 カリスマ的音楽家の道しるべ Copyright 狩心 2007-08-13 01:47:13
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