代用人間への手紙
hoochie coochie man

 『本当のことを言おうか?』という詩人の脅しは
  常に否定形でしか語れない
 代用人間とはそのようなものだ
 
 形がある いや そうぢゃない
 中身がある 必死にかき集めて 粘土いぢりをするように
 必死に なにか形作る
 『本当のことを言おうか?』と詩人が文句をたれると
 ああ! それはぼくの形じゃない! と放棄する
 そのとき ぼくの中身がぼくを放棄しているのか
 それとも ぼくが必死にかたちづくった形そのものが放棄しているのか

 すっかり わからなくなる

 この世にすべてあるもので僕が生み出され
 毎分 毎秒 更新されていくのなら
 僕は 他者との交信で 毎分 毎秒 生み出され
 殺されてゆく
 
 『私とは他者だ』と 永遠を見つけた詩人は
 すっかり 言葉をあきらめて
 詩人という形は 太陽に溶け 海に流された

 代用人間とはそのようなものだ

 僕が僕を自覚したとき それはあなただ
 
 あなたがあなたを自覚したとき それはぼくだ

 『本当のことを言おうか?』という問いにはいつも
 『本当のことを言おうか?』と問い返さねばならない

 代用人間は語る
 
 終わりなきトートロジーが私そのものだと

 それはあなたがいることでぼくがいて

 ぼくがいることであなたがいるような

 生ぬるいものでもなく 生ぬくいものでもなく

 やはり否定形でしか語れない

 終わりなきトートロジーは永遠に 反復する

 代用人間はそのようなものだ
 
 それはいつでもどこでも 

 マンホールの蓋のように あらわれて

 ホモ・サピエンスを穴ぼこにさそうだろう

 喰われたマンモスのように

 うつぶせのまま

 こう語る

 人間はまるで代用そのものだから!
 
 だれかがだれかに似せて作ったのだから!

 『本当のことを言おうか?』『私とは他者だ』
 それはすっかり露西亜のフォルマリストたちの文句に
 だまされて

 代用として生きるだろう。

 啓蒙するな ただ 知ることだ


自由詩 代用人間への手紙 Copyright hoochie coochie man 2007-08-12 05:31:07
notebook Home