迎終
山中 烏流

太陽が
触れるほどに膨れて
私の頬の辺りを
じりり、と焦がしている
 
へばりつく髪の先に
小さく火が灯って
そのまま燃えたいと願う
溶けてしまえたら、と
 
 
その日
世界は永遠を迎えた
誰もが無に還ることを
恐ろしく思わなかった
 
そういえば、最近
良く売れていた本の題名には
陰鬱な印象を持つものが
多かったような
気がする
 
 
干上がった海の底で
名前も知らないような魚が
必死に
えら呼吸をしていた
 
無知を嘆こうとして
やめた
この魚にだって
私の名前が
分かる筈がないのだ
 
 
家々の扉は
どこも固く閉ざされている
その内輪の世界を
私が覗き見ることはない
 
確実に近付く
永遠の始まりは
今、どこの家の扉を
叩いているのだろう
 
 
呼吸は既に
容易ではなくなった
 
熱風が肺を焼くことを
人は
呼吸と呼ばない
 
 
空がただ
赤く、青く、黒くなる
正常を保たなくなった視界に
正常の意味を問う
 
永遠の足音が
段々と聞こえてきた
私は、扉の前に立って
迎える準備をする
 
 
叩く音が聞こえる前に
最期だからと
自分の名前を、呟いてみる
 
乾いた唇から
こぼれでたその意識は
今更になって
嗚咽を上げていた



ただ、生きたい、と






























 


自由詩 迎終 Copyright 山中 烏流 2007-08-12 03:21:21
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