薫る少女の
千月 話子

初恋は 待ち合わせした 陸橋で。

緑の風が 少女と髪を梳く
甘い香りを連れて来たのだと
あなたが  言った。


いつもあった思い出の情景が鼻をくすぐる

青と緑の溶け合った 海のある町で
バスタブに身を沈め くねくねと
髪を 洗った

仄かに外国の花の香りを 身にまとう
私の後ろに ほのぼのとあなたを感じる

手を伸ばせば すぐに捕まえられる距離

肌が触れる 頬を寄せる 瞳孔が開いて揺れる

首筋の拍動が早まるほど 引き寄せたら
あなたの口元から フッと言葉が漏れる

「いい匂いが するね。」

この部屋に 他に誰が居ようとも
今は二人 夏の光り緩む朝靄の中


あなたは気付いていましたか?
甘くまどろむ 深層で
少女の薫りと交差した 私の香りが
今 あなたを捕らえているのだと知った心が
充足し 満ち満ちているということを・・・

瞳潤ませて 私を見つめる
男のあなたには 分かりますか?

     そうして
ごめんなさい・・・ ごめんなさい・・・
私はこのように 女なのです。 


自由詩 薫る少女の Copyright 千月 話子 2004-05-25 00:02:57
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