チョコミントグリーン
快晴

あなたがあまりに冷たく
私に接するものだから
私はいつの間にかアイスクリームになってしまって
暑さで溶けてしまわないようにと
こうしていつも冷凍庫の中

時々あなたは冷凍庫を開けて
今日の調子はどうかなんて聞いてくる
私がアイスクリームになってから
あなたは前より少し優しくなった

冷凍庫の中の居心地はそんなに悪くない
あなたはあまり料理をしない人だから
冷凍ドリアだとかパスタ
朝食用に保存した食パンなど色々といる
みんなそれぞれ個性があって面白いのだけど
私が一番仲が良いのは氷の「人」達

彼らは一定の時間おきに
ガラガラと音を立てて上から降ってくる
だから私がバイトしていた職場のように
わりと入れ替わりが早いのが玉にキズ

私と同じように彼らも夏が大嫌いで
特に沸いたばかりの麦茶なんかに入れられるのを
何よりも一番恐れていた
彼らは仲間があなたに連れ去られる度に
憐れみの言葉を口々に唱えながら
次は自分の番ではないかと不安がるのだ

そんな8月も半ばのある夜の日に
あなたはひどく酔っ払って帰宅した
どうやら私の知らない女を伴っているようで
その女は「何か冷たい物が飲みたいわ。」と
氷を取り出そうとした時に私を見付けた

「あら、私の好きなチョコミントじゃない。
これってまだ賞味期限は大丈夫かしら?」なんて
酒臭い息を吐きつつ大声で口にしながら
私を地獄のような暑さのキッチンに取り出した

あなたはもう眠ってしまったのか返事は聞こえず
私はその女にひとさじずつ掬われて食べられてしまった
女の体の中でドロドロに溶けた私の上のほうから
「悪くない味だわ。」と声が聞こえた


自由詩 チョコミントグリーン Copyright 快晴 2007-08-11 17:09:42
notebook Home