十三のつく日のふたり。
哀詩
十三のつく日にドアを開けて、僕は旅立つ理(ことわり)を告げた。
すると君は、
(しっているよ。)
と言って、かなしい顔をした。
十三のつく日にさよならを聞いて、わたしはかなしい顔になった。
するとあなたは、
(いってきます。)
と言って、わたしの髪をなでた。
君のくちびるから、吐息を感じていたら、
(あたしは明後日の日に旅立つよ。)
と君が言うから、
僕は知っているよ、と目を伏せた。
キスを置き忘れていくのを感じていたら、
(君より後に旅立ちたかった。)
とあなたは言うから、
わたしはいくらばかりか申し訳ない気持ちになった。
(あなたが帰って来たら、あたしはここにいないのね。)
と君が僕をみつめると、君のひとみが目にはいった。
衝動といって好いはやさで僕は、
君にキスをおとした。
(お前は泣くな。ずっと笑っていろ。)
とあなたはわたしの視界が歪みだしたことに気がついた。
笑おうと強がり、いつものように少しくちびるを動かして、
キスをもう一度、と求めた。
僕は知らないところへ、3週間勉強をしに、
君は知らないところへ、2年間勉強をしに、
旅立つ理由は同じであったけれど、
場所と期間は異なっていて、
心はひとつだと、いえる自信があるほど僕等、子供でない。
距離はそのまま、すれ違いに繋がることを、
知っていた。
知っていた。
十三のつく日に、わたし達は、繋がった。
十三のつく日に、わたし達は、離れた。
理由は言葉にしていけない雰囲気をまとっていて、
あいを憶えようとやっきになったのだけれど、
わたし達はしょせん効率好く体温を交えうる程、大人でない。
距離はそのまま、わたし達になって、
わたし達は、恋をしていた。
わたし達は、恋をしていく。