熱とゆらぎ
木立 悟
沈む地と曲輪を
音は巡る
尽きぬかげろう
止まぬ流れ
光より遅いものたちの
さざめきとかしわ手を聴いている
手のひらから手のひらへ
指から指へこぼれ落ちる
朝の端を
おりたたむように目をとじ
いちばん短いものに火を点け
動かさないように消し ふたたび点ける
さえずりを降り
煙の枝を降りる
故郷を見つめたままの
羽のかたちとはやさ
はじまりの波の向こうから
遅く速く放たれる
かなわぬ望みの色やふるえ
胸もとを洗い 消えてゆく
まばたきがつくる白い痕
みな懐かしくだが遠く
光を越える音の腕となり
小さな唱へひらかれてゆく