アナフィラキシーの夜
朽木 裕
リノリウムの床に 不安定な緑
君は まだ 息をしている 午前0時過ぎ
祈りのために組まれた手は
逆に濃い絶望を想起させ
消えないランプは手術がまだ終わらないことを知らせている
「良いとき」と「悪いとき」が必ず交互にくる人生の波
画用紙の中央に横一直線を書いて、
自分が生まれてから今現在に至るまでの状況を書き記す。
線より下が悪かったとき、上が良かったとき。
それをつなぐと波になるのだ。
「ね?悪いことあったら次は良いことあるでしょ?」
君がいつか教えてくれた
君は命の波と戦い続け、そして今日
命をうつす緑色の波に終わりを告げた
リノリウムの床に 不安定な緑
君はもう 呼吸をとめた 午前2時過ぎ