摂理
由希

朝、道端で

仰向けに転がった蝉を見た



よく

蝉が陽の光を浴びられるのは
長い一生の中で、最後の幾日かだけなんだよ

可哀相だね

そんなことを聞くけれど

私は
そうは思わない



土の中にいる間
彼らはそれに適した姿をしている

そして、闇の中で過ごす
その数年間があるからこそ

やがて飛び立てる日が来るのだ



人間だって同じだろう

若く健康で
全てが自由になる時期は

生涯の中で長くはない

それだけを楽しみに生きる人など
いないだろうに



今日を謳歌できない者に

飛翔の瞬間は、永遠に訪れない



勇者の亡骸を

蟻がそっと運んでいった


自由詩 摂理 Copyright 由希 2007-08-09 12:02:44
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